Brian TracyのTime Managementを読んで何が変わったか

1ヶ月ほど前にBrian TracyのTime Managementを読んだ。会社の福利厚生でSafari Booksが使えることを知ってすぐに登録したが、ちょうどタイムマネジメントを学び直す頃合いだと思っていたので技術書ではなくこちらに手を出した。2, 3時間で読める短さにシンプルにまとまっていて自己啓発本としてはかなり良書だと思う。日本語訳はざっとググったところ無さそう。もっとも、似たようなタイトルの本はいくつかあったのでおそらく内容が被っている感じだろう。

Time Management (The Brian Tracy Success Library)

Time Management (The Brian Tracy Success Library)

本題に進む前に上に書いた「タイムマネジメントを学び直す頃合い」について説明する。私は、この手の自己啓発本は「一回読んで終わる」ものではなく、「定期的に何度も読んで自分に言い聞かせる」ものだと思っている。こういった本の内容は理解するだけでは意味がなく、実践する必要があるからだ。そのためには時間をかけて生活に組み込み、習慣化を試みることになる。ただし、生き方のフレームワークを変えることはそう容易ではない。一度に複数のアクションを習慣化することは不可能に近く、1つずつフォーカスして組み込む方が圧倒的に効率が良い。

また、これは個人的な経験に基づくルールだが、書物から得られた知識のうち、実践できなかったものは時間とともにアーカイブされていき、再びどこかでリマインドされるまで有用性を失う。結果として、生活をハックするタイプの本は、同じトピックのものでも時間を空けて複数回読むことになる。Time Managementを読んだ時の話をすると、その前に読んだ本の内容が全て生活に組み込まれるかアーカイブされ、タイムマネジメントについて学び直すのに適した時期だったということになる。

前置きが長くなったが、Brian TracyのTime Managementを読んでから1ヶ月たった今、実践できていることがなかなか多く、結果も出ていて嬉しいのでここにまとめてみようと思う。

その1: To-Doリストを毎日作成するようになった

この習慣は、3つのルールに分けることができる。

  1. 毎晩就寝前に翌日やることをまとめたTo-Doリストを作成する。
  2. 毎朝始業前に30分間リストを眺めながら自分の長期的なビジョンをおさらいし、タスクを優先付けする時間を設ける。
    • このとき、必要ならば要素を足したり、タスクをより細かく分割したりする。
  3. リストに載っていないことは一切行わない。新しい仕事が入ってきても、必ずリストに追記し、優先度を設定した後に行う。

この手法を習慣化するのは個人的にかなり難しかったが、その見返りもまた大きかった。まずルール1だが、寝る前に翌日の行動を大まかに把握し書き留めておくことで、心理的な負担ががくっと減った。時にはブレスト的なことを行い30分ほどかかってしまうこともあるが、そのコストをさらに上回る安眠効果があった。また、翌朝もリストを見ながら支度するだけなので思考の節約になった。

ルール2は出勤しデスクについてから実践することになるが、この習慣もかなり効果的だった。まず、自身の長期的なビジョンや会社での役割などをおさらいしながら、タスクを眺める。これを始めるまでは、長期的なビジョンや目標は明確に持っていたにも関わらず、それを毎日自分に言い聞かせてはいなかった。そのため、マクロな時間軸を意識せずにダラダラと過ごしてしまった日が何度もあった。朝の振り返りを設けてからは1日もない。

また、ルール2において優先付けをを行う際、Brian Tracyが書籍内で紹介していた手法を採用したが、それは以下の5つの優先度に基づく。

  • A - 最優先 (must-do)
  • B - 優先 (should-do)
  • C - やらないよりは良いが、効果は低い (nice-to-do)
  • D - 他人に振るべき (delegate)
  • E - やってはいけない (eliminate)

付け始めてから、ほとんどの時間がCのタスクに割り当てられていたことに気づいた。比較的楽であり、仕事をした気になれるからだろう。これに気付いてから、間違いなくAに当てられる時間が増えた。

最後に、最も厳しいルール3について。リストをどれほど網羅的にするべきかの指示は特になかったが、「同僚と談笑する」、「NBAのスコアを確認する」等のミクロな行動まで書くことにした。これにより、一見無害な行動のコストとメリットを再確認することができるし、1日の終わりに全ての行動を確認することができる。何よりそれらが長期的なビジョンにどう関与するかを常に考えさせられるため、無駄な行動をすることのハードルが上がり、それらに費やす時間も減った。

その2: メールチェックが1日1回になった

Brian Tracyのアドバイスの1つに「似た仕事をなるべく纏める」というものがあったため、メールの確認・返信を毎日1回バッチ処理してしまおうと思って実践してみた。間違いなく人と環境を選ぶ習慣だが、幸い現環境では可能だった(所属している組織では、真の緊急時はメールではなく、社内チャットで連絡が来る)。個人的に昼飯後が最も脳の働きが鈍く単純作業に向いているため、14:00時ごろにメールの確認をまとめて行なっている。これにより、以下のメリットが得られた:

  1. 朝の最も生産性の高い時間を、最重要な仕事に使える
  2. メール通知をOFFにできるため、目の前の仕事に集中できる
  3. メールチェックという魅力的な「ライバル行動」を除去できる

3点目について詳述すると、メールチェックというのは

  • 簡単に行える(心理的、物理的ハードルが低い)
  • 仕事をしている気にさせてくれる(他人からも仕事をしているように見える)
  • 「新しい情報があるかもしれない」という興味を満たしてくれる

という特徴があり、高い意志力を要する仕事をしている人間にとって、かなり魅力的な「逃げ場」なのである。(このように、本来やらなくてはならない行動の代わりに行うことができる誘惑的な行動を、行動科学マネジメントを提唱している石田淳氏は「ライバル行動」と呼んでおり、これが言い得て妙だなと思ったので使わせていただいた。)メールチェックを1日1回と決めそれに従うことで、やっかいな誘惑を1つ取り除くことができた、ということである。

その3: タイムマネジメントができる人間のように振る舞い始めた

タイムマネジメント系の自己啓発本は何冊も読んできたため、今回読んだ本も大体が聞いたことのある内容だったが、1点ユニークなところがあった。具体的な手法より先に、心理面のアドバイスから始まったことだ。

「自分をタイムマネジメントが得意な人間だと信じ、それらしく行動しろ」というアドバイスについて初めは懐疑的だったが、簡単そうだったので実践してみることにした。具体的には、

  • 職場で自信満々に振る舞う
  • デスクを片付ける
  • ミーティングを早く終わらせたい姿勢を見せる。必要であれば自分から進行役を受け持つ
  • 無理してでもなるべく定時に帰る
  • 自分に「お前はタイムマネジメントが得意だ」とくり返し言い聞かせる

こういったことを意識しながら仕事をした。面白いことに、日を重ねるごとに周りの評価が「できる」人間に変わっていくのが実感できた。特に初対面や、初めてチームになる人たちの信頼を感じることができ、価値を提供できたときに「さすが」「やっぱり」といった言葉をもらうことが多くなった。1ヶ月の短い期間でも、「できる」人間を装うことの効果が十分確認できた。

驚くことに、内的な変化もあった。定時退社のため、制限時間を意識するようになり、しばしばハッカソンに参加しているような感覚になる。この危機感により、以前よりも仕事に集中することが容易になった。また、同僚の期待がプレッシャーになり、上記のCタスクやEタスクに手を出してしまったときも、すばやくリカバリーすることができるようになった。具体的にどの習慣の効果が一番大きかったかはわからないが、少なくとも形から入ることでタイムマネジメントが得意な人間に近づけたことは確かである。

実践できなかったこと

朝方になる

朝仕事する時間が長いほど良いことはわかっているのだが、家庭環境が悪かったり、夜型の友人が多かったりしてなかなか早起きを習慣化できない。

他人に仕事を振る

マネージャーではないのでなかなか機会がないのと、自分でもできることは自分でやってしまう癖が着いてしまって、踏み出すことが難しい。

休日も生産性を上げる

職場では集中できるのだが、週末は依然としてだらだら〜このブログも全然更新できない